これくたぶる!

モンスターマスクコレクター、ALI@ハット卿のマスクと本と映画に関する無駄話。不定期更新。

エルム街をさまよって/バターフィンガーズ伝説

インディペンデント系のアイテムというのは、どーにも分かりにくい。サイトを持って地道に商売しているようなところはむしろ少数で、大半はブラックマーケット的に流通しており、知らない間にリリースされ、知らない間に売り切れている―大方そんな感じなのだ。
99年に国内初のコレクターマスクサイトとして本家creatures showcaseをUPしたのも、何がリリースされていたのかだけでも記録しておかねば埋もれてしまう、と思い立ったのがキッカケだった*1。いわば個人的備忘録といった性格のサイトなのだが、現物を入手して確認出来たもののみをUPするというやり方に拘っているので、当然のことながら大半のものはこぼれてしまう。買い逃したものが自分好みの傑作だったと知って、後で悔しがるのがいつものパターンだったりする。どうにも困ったものである。

今回取り上げるバターフィンガーズもそんな中のひとつであった。

バターフィンガーズ(不器用者、モノを良く落とす人の意がある)と名づけられたこのマスク、映画「エルム街の悪夢」のキャラ、フレディ・クルーガーのマスクとして、U.S.のマスクコレクター、特にスラッシャー系コレクターの中ではつとに名高い。他に優れたフレディマスクがないわけじゃないと思うのだが、「最高のフレディマスクは?」と聞くとディスプレイ派、コスプレ派の区別なく「そらやっぱバターフィンガーズだろ?」と答えるコレクターは多い(コスプレ派にはSPFX製等のシリコンマスクの人気も高いが)。なんでこんなに評価が高いのか、いまいちはっきりしない。しかもほんの数年前(2007年)にリリースされたモノなのに早くも伝説化しているような、なんだか良く分からないところの多いマスクなのである。

まず制作アーティストがはっきりしない。一般には、ナイトオウルのメンバーだったベア(バリー・ブレイズデル)とされている。が、そうではない、マーク・グッドソンの作だという説もあり、中には断定する人もいる。「彫り方がマークと似ている」、「いやペイントはベアのものだ」と、ますます良く分からない。

さらに別バージョンやコピーが多い。オリジナルの他にクラッシュ・カニングハムがペイントしたセカンド・ラン、コリー&スティーブ版(未見。バターフィンガーズは自分たちの作と主張しているらしい)、ジョン・トーマスやルイス・フライのコピー版(ルイス・フライはオリジナルモールドを所有しているらしい)、現在流通中のデビルズ・ラテックスのスティーブ・ベラミー版(ベアからモールドを入手)等々、紛らわしいことこの上ない。

そして困ったことには、オリジナル制作者と目されるベアやマーク・グッドソンが代金を支払った顧客を残して失踪してしまい、信用を失ってしまったことである。これによってこのマスクの詳細を知る人があまりいなくなってしまった。実に残念なことではあるが、いかにもインデペンデントらしい事件でもあると言えようか。まぁ、こういうことはこの世界では良くあることなのだけれども。

さて、この3年ばかり、当方はあまり売りが出ないバターフィンガーズを追跡していた。場合によっては500ドル以上とか結構高かったりするので、なかなか懐具合とタイミングが合わずチャンスを逃しまくり、後版やコピーを買ったりして紛らしていたが、最近ようやっとファーストベアのオリジナルを入手できた。嬉しいので記念に紹介しておこう。


"バターフィンガーズマスク" ファーストラン・オリジナル。かなりカッチョイイ。

ルービーズの安いグッズでディスプレイ。フェドラハットがちょい小さい。^^;

画像が限定25個のバターフィンガーズ・ディスプレイバージョン。まずサイズがこれまで入手したコピーなどと比べると格段に大きい。さらにモールドは詳細を極め、実にシャープ。現在販売中のデビルズ・ラテックス版などはすでにモールドが大幅に甘くなっており、比較すると雲泥の差がある。思ったよりもラテックスが薄いのが気になったが、これがオリジナルであることは、まず間違いないだろう。というか、写真を見た瞬間に「あ、こりゃオリジナルだわ」とすぐ分かった。なんというか、コピー品や後バージョンなどとはまるっきりオーラが違うのである。

造形はシリーズ全作を通したスクリーンでのロバート・イングランドのメイクアップイメージを見事に再現しており、凶悪な顔立ちでありながらなおかつ実に男前に仕上がっているところがポイントである。この"男前"というのが重要で、ようするに、なかなかカッコいいマスクなのだ。他のフレディマスクにはあまりこういう感じはないので、この辺が人気の秘密かもしれない。

技術的にも素晴らしい出来で、特に見事なのはフレディの特徴であるケロイドの表現である。深く、または浅く、かすれてみたり、抉(えぐ)れてみたりと、極めて映画に忠実でありながら変化のつけ様が心憎い。なかなかこんな風には彫れないのではなかろうか。

ペイントは、濃い目のフレッシュトーンのみで特に超絶技巧と言うようなものはないが、必要最小限を満足しており、余計なことを一切していないところに好感が持てる。造形が素晴らしいので、問題にならないと言う感じだろうか。私の入手したのはアクリルアイ入りのアンカットのディスプレイバージョンだが、裏にスリットを入れれば十分かぶれる大きさであり、装着するとまるでロバート・イングランド本人かと見紛うばかりに変身できること請け合いである。


このマスクを着用した動画。ロバート・イングランドくりそつ。

総じて評判どおりの出来栄えで、エルム街グッズをかたっ端から蒐めている人は別として、ふつうのコレクターならフレディマスクについてはこれ1個あれば十分ではなかろうか。

2枚目の写真は国内でも良く出回っているルービーズ製のフェドラハットとセーター、さらにロバート・イングランドご本人のサイン入りグローブを組み合わせて飾ってみたもの。ディスプレイとしてはこれで完璧。飾るときはこーゆー風にしたいものですな。

ということで現在ではかなりレアになってしまっているが、「エルム街の悪夢」ファンでライフサイズのプロップレプリカを探している方に「決定版」として推薦する次第。

なお、今回間に合わなかったが、本家マスクコーナーにも追ってレビューを掲載する予定。

しばらくの間うろつき回っていたエルム街、これでやっと抜け出られそうな気がする今日この頃であります。


*このブログはWEBサイトクリーチャーズショーケース内の1コンテンツという位置付け。本家も覗いてやって下さい。ここへのリンクはメニュー頁右下です。creatures_showcase

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*1:ちなみに本年7月でサイト開設13年目。たまの更新ながら良く続いているもんである。